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ツマアカスズメバチの巣を見つけたら?生態の特徴や駆除方法を解説

著作者:wirestock/出典:Freepik

ツマアカスズメバチとは、日本の特定外来生物に指定されている外来種のスズメバチです。
現在、ツマアカスズメバチは国内外に多くの被害を与えており、自宅や職場の近くで巣を見つけた場合は要注意。
スズメバチ科のなかでも攻撃性が高いハチのため、うっかり近づいてしまうと大変危険です。
もしツマアカスズメバチや巣を見つけてしまった場合は、自治体や専門の駆除業者に依頼するなど、速やかに対処する必要があります。

今回は、ツマアカスズメバチの生態や特徴について解説。さらに、巣を見つけた場合の駆除方法などをお伝えします。

ツマアカスズメバチに対して正しい対処ができるよう、ぜひ本記事を参考にしてください。

ツマアカスズメバチの生態について巣の特徴や見分け方を紹介

ツマアカスズメバチ

※画像参照元:毎日新聞(https://mainichi.jp/articles/20220523/k00/00m/040/060000c

ツマアカスズメバチに対処するためにも、まずは生態を知るのが大切です。
特徴は、主に以下となっています。

名称 ツマアカスズメバチ
原産地 インドネシア・ジャワ島
分布地域 アジア全域(中国、台湾、日本、タイ、インドネシアなど)

ヨーロッパの一部地域(スペイン、ポルトガル、ドイツ、フランス)

体長 女王バチ:最大30mm

働きバチ:平均20mm

特徴 頭部:黒色

アゴ・脚先:黄色

腹部:赤褐色・オレンジの模様

捕食対象 成虫:昆虫(ミツバチ・ハエ・トンボなど)

幼虫:昆虫(ミツバチ・ハエ・トンボなど)・果肉の柔らかい果実(モモ、ブドウなど)

巣の場所 3~6月:土のなか、低木の茂み

6月以降:高さ数メートル以上の樹上や高層マンション、電柱など

ここから、ツマアカスズメバチの生態や巣の特徴、見分け方を詳しくご紹介します。

ツマアカスズメバチの生態

ツマアカスズメバチは、2015年以降、日本においては外来物法に基づく「特定外来生物」に指定されているハチ目スズメバチ上科スズメバチ科に属するハチ。[注1]
特定外来生物とは、海外起源の外来種で、生態系へ悪影響を与えたり、人命や身体を危険にさらしたり、農林水産業へ被害をおよぼすもの、または、その恐れがあるもののなかから指定された生物のことをいいます。

ツマアカスズメバチの原産地は、インドネシアやタイ、マレーシアや中国といったアジア諸国の温暖な地域。
その後、スペインやフランス、ポルトガルやドイツといったヨーロッパ地方に分布していきました。
日本においては、2012年に長崎県対馬市で初めてその存在が確認されて以来、2015年には福岡県北九州市、2016年には宮崎県日南市で発見。
こうして九州で定着したツマアカスズメバチは、2018年には大分県大分市で、2019年には山口県防府市と、本州でも生息が確認されています。
主に樹木が繁茂する森林地域や田園地域など、自然の多い地域に生息していますが、近年では都市部で巣が見つかるケースも。

ツマアカスズメバチは適応能力が非常に高く、分布地域が拡大するスピードが早いというのが特徴のひとつです。
アジアやヨーロッパにこれほど広く分布し定着している理由は、適応能力の高さにくわえ、繁殖力が強いことにもあります。
通常、スズメバチ科の巣にいるハチの数は約500~1,000匹ほどですが、ツマアカスズメバチは、ひとつの巣になんと約5,000~10,000匹もの個体がいるのです。
フランスでは、1つの巣に平均12,000匹もの個体がいるともいわれています。

捕食対象は昆虫類で、とくにミツバチを好んで食べることから、養蜂や農業へ与える被害も甚大。
また、ツマアカスズメバチは攻撃性が高く毒性もあることで知られており、海外では刺傷による死亡例の報告もあります。

[注1]特定外来生物等一覧 | 日本の外来種対策 | 外来生物法
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html

ツマアカスズメバチの巣の特徴や活動時期

ツマアカスズメバチの巣は、縦長で大きく、涙滴型をしています。
巣の大きさは、平均で直径約60cmほどで、これは、スズメバチの巣のなかでも最大級の大きさに相当。
この巨大なサイズこそが、ツマアカスズメバチの巣のもっとも特徴的な部分といえるでしょう。

ツマアカスズメバチが活発に活動しだす時期は、主に初夏を過ぎる頃から秋にかけて。
まず3月~6月頃にかけて、交尾を終えた女王バチは巣を作り、卵を産みます。
その後、6月以降の初夏の時期から、働きバチが餌を集めたり、巣を守るために行動したりと、活発に活動しだすんです。
個体数の増加は秋頃にピークを迎え、冬にかけて徐々に減少していき、年内に新しい女王バチを残した個体は死滅。
その後、1月~3月の期間中、新しい女王バチは次の年の繁殖に備えて単独で越冬します。

ツマアカスズメバチの見分け方

ツマアカスズメバチの見分け方

ツマアカスズメバチの見分け方として挙げられるのが、全体的に黒っぽい色をしているところと、腹部先端にオレンジや赤褐色の斑紋が見られるところです。
腹部の赤褐色の斑紋から、ツマアカスズメバチは「ツマアカ」と呼称されることもあります。
他のスズメバチの頭部は黄色やオレンジ色をしていることが多いですが、ツマアカスズメバチの頭は黒色のため、比較的見分けやすいです。
そのほか、ツマアカスズメバチには、アゴと脚先が黄色いという特徴があるのもポイントとして覚えておきましょう。

働きバチの体長は、オスが約20mm、メスが約30mmほど。
これは、オオスズメバチやヒメスズメバチなどと比べるとやや小ぶりなサイズといえます。
ツマアカスズメバチとほぼ同じサイズ感のスズメバチは、チャイロスズメバチやキイロスズメバチなど。
チャイロスズメバチは全体的に茶色っぽい見た目をしており、キイロスズメバチは特徴的な黄色と黒の模様がありますので、ツマアカスズメバチの見分けはつきやすいです。

スズメバチ科の働きバチの平均体長
オオスズメバチ 25~40mm
ヒメスズメバチ 24~37mm
チャイロスズメバチ 17~24mm
キイロスズメバチ 17~24mm

ツマアカスズメバチの危険性や被害

ツマアカスズメバチの危険性や被害

※画像参照元:毎日新聞(https://cdn.mainichi.jp/vol1/2022/08/31/20220831k0000m040249000p/9.webp?1

ツマアカスズメバチの攻撃性が高いことはすでにお伝えしましたが、毒性も強力であるという特性があります。
スズメバチのなかでも攻撃性・毒性ともに最強といわれるオオスズメバチよりやや毒性は劣るものの、攻撃性や威嚇性が強いためじゅうぶんな警戒が必要。
そのため、オオスズメバチをはじめキイロスズメバチ・モンスズメバチと並ぶ、危険度の高いスズメバチに分類されています。
事実、東南アジアや台湾では、ツマアカスズメバチに刺されたことにより死者も出ています。
また、ツマアカスズメバチの危険性は、人体に対してのみにとどまらず、養蜂業や農業への影響や生態系への被害まで及んでいるのです。

では、具体的にどのような危険性や被害があるのでしょうか?
ここから、詳しくお伝えします。

人体への危険性

人体への危険性としてまず挙げられるのが、刺傷によるアナフィラキシーショックでしょう。
アナフィラキシーショックとは、ハチの毒性に対するアレルギー反応によって身体に現れる症状のこと。
毒性の強いスズメバチ科のハチに刺された場合は、意識レベルの低下や呼吸困難など、重篤な症状が現れ、最悪の場合、命の危機に陥る危険性があります。
またアナフィラキシーショックの原因であるアレルギー反応は、短時間で再びハチに刺されることでより強く現れます。
ハチの毒には「警戒フェロモン」が含まれており、1匹のハチに刺されることでマーキングされてしまうと、他のハチも臨戦態勢になって襲ってきます。
そのため、刺された後の処置をおこなう際は、まずなにより早急にその場を離れ、ツマアカスズメバチからの二次被害防止に努めましょう。

一般的に、ツマアカスズメバチをはじめとした毒性の強いスズメバチに刺されると、痛みや腫れの症状が出ます。
体質によっては、深刻な健康被害が生じるリスクもあるので、刺された場合は速やかに処置することが大切です。
万が一ツマアカスズメバチに刺されてしまった場合、患部から針を抜き取り、毒を絞りだしてください。
抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏をお持ちの場合は、患部に塗っておくのが有効です。

応急処置を行った後は、傷口を清潔な水で洗い流し、患部を冷やして、医療機関を受診するようにしてください。
ツマアカスズメバチに刺されて体調に異変を感じる場合は、ためらわずに救急車を呼びましょう。

養蜂業・農業への影響

ツマアカスズメバチによる養蜂業・農業への影響

ツマアカスズメバチはミツバチを好んで捕食するため、養蜂業への被害が数多く確認されています。
たとえば韓国では、2~3週間のうちに300もあるミツバチ群のうち、50群もが消滅してしまいました。
これにより、ハチミツの生産のみならず、花粉交配用ミツバチによって受粉していた野菜や果実も不作に陥ってしまうという状況を生んでいます。
花粉交配用ミツバチは、いまや農作物生産における花粉交配の手段として欠かせません。
ミツバチによって受粉をおこなう野菜は、カボチャ・ナス・トマト・キュウリ。フルーツは、イチゴ・メロン・ブルーベリーなどがあります。
ミツバチが激減してしまった場合、これらの受粉作業を人為的におこなう労力が必要。
さらに、人の手では受粉が偏ってしまうため作物が奇形になってしまう確率も高まってしまうのです。

また、ツマアカスズメバチの成虫は昆虫だけでなく、炭水化物源を接種するため果実類を食べることもあります。
海外では、果肉が柔らかいモモやブドウなどを栽培する農家への被害も報告されているのです。

こうしたことから、養蜂業・農業へ経済的にも甚大な被害を与えることが懸念されています。

生態系への被害

ツマアカスズメバチの捕食対象は、ミツバチや毛虫、チョウやハエ、トンボやクモといった昆虫類。
スズメバチのなかでも、捕食対象となる昆虫類が多いことから、生態系への被害も懸念されています。
フランスや韓国、日本の対馬では、移入したツマアカスズメバチが繁殖したことで、他の在来種が激減しているのです。
とくに対馬においては、天敵となりうる大型のスズメバチがおらず、現在ではツマアカスズメバチが最優先種(生態系のトップ)になってしまった、というデータも発表されています。[注2]

もちろん、ツマアカスズメバチにもハチを捕食する野生のニワトリやハチクマという鳥類、熊、人間などといった天敵も存在します。
しかし、どれもツマアカスズメバチの繁殖を抑えるほどの外敵になり得ていません。
外敵が少ないことから、ツマアカスズメバチの数は増え続け、生態系への被害をもたらしているのが現状なのです。

[注2]侵略的外来種ツマアカスズメバチの帰化状況と生態情報にもとづいた防除法の確立
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-26440250/26440250seika.pdf

ツマアカスズメバチの巣が作られやすい場所

ツマアカスズメバチの巣が作られやすい場所

3月~6月にかけて、交尾を終え繁殖を控えた女王バチが生巣・産卵するのが、草むらや土のなか、藪といった人目につきにくい場所です。
そのため、森林や田園などに巣が作られやすいといえるでしょう。
その後、働きバチが誕生し本格的に営巣の活動がはじまる6月以降は、地上から15~20mほど高い樹木に巣を移動させます。

基本的に、ツマアカスズメバチの巣は森林地域や田園地域に作られることが多いですが、
都市部の街路樹や電柱にも営巣が確認されており、マンションや電柱などに巣を構える場合もあるので注意してください。
実際、お隣の韓国では、ツマアカスズメバチが高層マンションへ巣を作り、住人が刺されてしまったというケースも報告されています。

ツマアカスズメバチの巣は、他のスズメバチより大きな巣をつくるため、発見は比較的容易です。
ただ、すでにお伝えしたように、巣が大きいぶん生息する働きバチの数は数千匹以上にも及ぶため、襲われれば命の危機に瀕することも考えられます。
巣を見つけた場合は、近くに大量のハチが潜伏していることを想定し、くれぐれも刺激しないように静かに立ち去りましょう。

ツマアカスズメバチに刺されないための対処法

蜂の注意の看板

ツマアカスズメバチと遭遇してしまった場合、どのように対処すればよいのでしょう。

攻撃性の高いツマアカスズメバチは、刺激を与えてしまうと、執拗に攻撃してきます。
そのため、見つけても触ったり手で払ったりしないようにしてください。
また、ツマアカスズメバチは巣に近づいただけで攻撃してくる個体も珍しくありません。
巣を見つけてしまった場合、ハチを刺激しないよう、騒がず速やかにその場を離れるようにしましょう。

とはいえ、刺されないためには、まずなによりも出会わないことが大切です。
繰り返しになりますが、ツマアカスズメバチは外敵を執拗に攻撃する特性があります。
攻撃対象として認識されてしまった場合、しつこく追跡し攻撃を仕掛けてくるため、非常に危険です。
毒性がそれほど強力でなくとも、何度も刺されることで、アナフィラキシーショックのリスクが高まります。

一般的に、頭や腕はハチに刺されやすい部位とされているので、長袖・長ズボンなど、肌が極力露出しない服装を心掛け、帽子をかぶるようにするのがベター。
また、スズメバチ科のハチは、天敵である熊を連想させる黒色を攻撃対象とみなすという説があります。
さらに、黒色は熱を吸収しやすく、ハチに熱源として感知されやすいので避けましょう。
ツマアカスズメバチが潜伏していそうな山や森へ出かける際は、白やピンク、水色などの淡い色や、ハチを刺激しない黄色やオレンジ色といった服装を心がけるとよいですよ。
くわえて、ハチは匂いにも反応する習性がありますので、整髪料や香水をつけず、こまめに汗を拭くようにしてください。

ツマアカスズメバチの巣を駆除する方法

ツマアカスズメバチの駆除用グローブ

ツマアカスズメバチが飛んでいるのを見かけた場合、すでに近くに巣が作られている可能性が高いです。
巣内には女王バチが産んだ数千匹もの働きバチがおり、直ちに処置する必要があります。

初期の巣であれば自力でも駆除可能なアシナガバチやミツバチと違い、ツマアカスズメバチは攻撃性が高く、巣の駆除を自力で行うのは非常に危険です。
また、駆除には防護服や高い位置にある巣を駆除するための道具など、大がかりな準備をする必要があります。
捕獲機を設置したり殺虫剤を散布したりといった予防措置を施すことは可能ですが、自力での駆除までを行うのは、あまり現実的ではありません。
市販の殺虫剤では、ツマアカスズメバチを完全に駆除しきることは難しいでしょう。

そのため、巣を見つけた場合は、自治体や専門業者に依頼して駆除してもらうのがベストです。
ツマアカスズメバチかどうかわからない場合も、自己判断で対処しようとするのではなく、まずは自治体や専門業者に相談するのがよいですよ。

ここから、自治体や専門業者に巣の駆除を依頼する際の手順を解説します。

自治体に連絡して対処してもらう

ツマアカスズメバチや巣を見つけた場合は、速やかに自治体へ連絡し対処してもらいましょう。
自治体に相談すれば、無償で駆除してもらえるケースもあります。
具体的な手続きの方法や、ツマアカスズメバチに関する問い合わせにも対応してくれます。

ただ自治体によっては、ツマアカスズメバチの駆除を無償で実施する制度がない場合もあります。
そうなると、駆除費用を自己負担する必要がありますが、助成金や補助金が支給される場合もあるので、まず第一に自治体の担当部署に相談するのがよいですよ。

外来生物にかかわる問い合わせは、地方環境事務所への連絡が必要です。
ツマアカスズメバチを見かけた場合は、日本の外来種対策一覧にある、お近くの地方環境事務所に問い合わせてみましょう。

日本の外来種対策 連絡先一覧
https://www.env.go.jp/nature/intro/reo.html

専門業者に駆除してもらう

ツマアカスズメバチの駆除で、一番確実なのは専門業者に依頼することです。
経験豊富な専門業者に依頼すれば、ツマアカスズメバチのみならず、どんな種類のハチの巣でも、安全に駆除してもらえます。
また、自治体が対応していない地域でも、速やかに対応してくれるので安心。
駆除にかかる費用や、どのような作業を実施するのかを知りたい場合は、専門業者のサイトを参考にすると詳しい説明が掲載してある場合が多いです。
無料で見積もりを実施している専門業者もあるので、まずは相談してみるのがよいですよ。
専門業者が到着するまでは、巣には近づかず、ハチを刺激しないようにしてください。

専門業者に巣を駆除してもらう際も、ツマアカスズメバチは生息地域の報告が必要なため、自治体に連絡を入れて情報提供を忘れず行っておきましょう。

まとめ

ツマアカスズメバチは、スズメバチ科のなかでも攻撃性が高く危険なハチです。
スズメバチ科のなかでは比較的小さいサイズですが、一度攻撃対象と認識されてしまうと、執拗に攻撃されてしまいます。
また、1匹のハチに刺されるとマーキングされ、数千匹にも及ぶツマアカスズメバチが一斉に襲ってくることも。
毒性はそれほど強力ではないものの、アナフィラキシーショックのリスクはじゅうぶんにあります。
このように、ツマアカスズメバチは非常に危険性が高いうえに、巣を高所に作る習性があるため、自力での駆除は非常に困難です。
ツマアカスズメバチの被害を防ぎ、生息域を広げない対策は「数を増やさない」「侵入を防ぐ」「巣を見つけたら迅速に駆除を行う」という3つの方法につきます。

もしツマアカスズメバチや巣を見つけてしまった場合は、むやみに近づいたりせず、自治体や専門業者へ連絡し、駆除を依頼しましょう。

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